世界中で地球温暖化やそれにともなう異常気象が進行している昨今、日本でも先月北海道 佐呂間町で最高気温39.5度が記録されるなど、四季が無くなるのではないか、もう日本は亜熱帯なのではないかと思われるほど高温や豪雨などが増加しています。そこで気になるのは亜寒帯や熱帯…といった「気候区分」は一体どのようにして行われているのかという事でしょう。
一口に気候区分と言っても、様々な観点からさまざまな区分が出来るため、その区分法は無限にあるといってもいいでしょう(例えばある人が世界中を回り、「ここなら年中半袖が良い」「ここは春先まで上着が欲しい」と区分することも立派な「気候区分」なのです)。ここではそんな数ある気候区分の中から最も主流な区分として世界中で利用されていて、かつデータがあれば誰でも求めることが出来る簡単な気候区分で、中学校や高校の地理で学ぶ事で誰もが馴染みのある・もしくはどこかで聞いたような気候区分といえば…といった感じもある「ケッペンの気候区分」を紹介します。ケッペンの気候区分はドイツの気象学者ケッペンが、森林の樹種などの林相に基づいた植生分布をもとに気候を区別したものです。気候区分はABCDEの5つの気候(気候帯)に分類され、それぞれがまた細分化(気候区)されていて、気候区を判定する場合は幾つかのプロセスを踏んでいきます。
※記号を当てはめて数式にしたほうが簡潔で美しく表現できますが、私が数式アレルギーなのであえてしつこく文章で表現していきます。ご了承ください。
※ケッペンの提唱した気候区分には高山気候(H)は存在しないため、当記事でも標高による気候への影響は考慮しません。
(世界の気候を調べたければ、このようなデータブックで正確な判定を十分に調べることが出来ます。)
ケッペンの気候区分 分類手順
【①、② 乾燥限界値の算出】
基本区分のA-Eに分類する前に、まずは「乾燥限界値」というものを求める必要があります。最初に注目するのは「最少雨月と最多雨月が夏と冬、どちらにあるのか」です。
①-1 最少雨月が冬の場合
夏の最多雨月と冬の最少雨月に10倍以上の差があるかを確認する
→差がある場合…w気候→②-1へ
→差がない場合…f気候→②-3へ
①-2 最少雨月が夏の場合
冬の最多雨月と夏の最少雨月に3倍以上の差があるかを確認する
→差があり、かつ最少雨月降水量が30mm未満である場合…s気候→②-2へ
→差がない場合…f気候→②-3
②-1 w気候での乾燥限界値
(年平均気温(℃)+14)×20=乾燥限界値
→③-1へ
②-2 s気候での乾燥限界値
年平均気温(℃)×20=乾燥限界値
→③-1へ
②-3 f気候での乾燥限界値
(年平均気温(℃)+7)×20=乾燥限界値
→③-1へ
【③ 乾きすぎて木が育たない】
乾燥限界値を算出したことで、その地点での乾燥による樹林の植生の可否が分かるようになります。乾きすぎて樹林分布が不可能な気候は「B(乾燥帯)気候」に振り分けられます。ここではそれに当てはまるかどうかを判定、分類します。
③-1 B(乾燥帯)気候か否かの判定
年間降水量(mm)≧乾燥限界値
→B気候には該当しない→④-1へ
年間降水量(mm)<乾燥限界値
→B気候に該当→③-2へ
③-2 B(乾燥帯)気候内の分類
年間降水量(mm)≧乾燥限界値の1/2
→BS(ステップ)気候【判定終了】
年間降水量(mm)<乾燥限界値の1/2
→BW(砂漠)気候【判定終了】
(③-3 年平均気温による細分)
年平均気温が18℃以上
→h(それぞれBSh、BWh)
年平均気温が18℃未満
→k(それぞれBSk、BSh)
※③-3の細分は省略される場合が多いです。
【④ 寒すぎて木が育たない】
ここに来た時点で、その地点の降水量が乾燥限界を上回ることは判定できましたが、樹木が生育するために必要な要因はもう1つあります。それが気温の高さです。ここでは視点を乾燥限界から最低気温に移して判定していきます。まずは寒すぎて無樹林気候となる「E(寒帯)気候」かどうかを振り分け、分類していきます。
④-1 E(寒帯)気候か否かの判定
最暖月の平均気温が10℃以上
→E気候には該当しない→⑤へ
最暖月の平均気温が10℃未満
→E気候に該当→④-2へ
④-2 E(寒帯)気候内の分類
最暖月の平均気温が0℃以上
→ET(ツンドラ)気候【判定終了】
最暖月の平均気温が0℃未満
→EF(氷雪)気候【判定終了】
【⑤ 気温で樹林のタイプを分類】
乾燥限界を通過し、最暖月平均気温の判定も通過したことで、樹林が形成される気候に位置することがようやく判明しました。ここでは最も寒い月がどれだけ暖かいかで、残るA(熱帯)気候、C(温帯)気候、D(冷帯(亜寒帯))気候の気候区分を分類します。
⑤ 最寒月平均気温での分類
最寒月の平均気温が18℃以上
→A気候に該当→⑥へ
最寒月の平均気温が18℃未満かつ、(最寒月の平均気温が)-3℃以上
→C気候に該当→⑦-1へ
最寒月の平均気温が-3℃未満
→D気候に該当→⑧へ
☆18℃の基準はヤシの木が生育できるか、-3℃の基準は根雪が残るかどうかであると言われています。
【⑥ A(熱帯)気候内の分類】
年間を通して気温が高い熱帯気候では、年間の降水量の全体量と、年間の降水量の変動幅が植生に大きく左右するため、その2値を利用して細かく分類していきます。またここでは式に起こすと複雑なので、グラフを用いて分類します。
⑥ グラフによる分類
⑥-1→Af(熱帯雨林)気候【判定終了】
⑥-2→Am(熱帯モンスーン(※1))気候【判定終了】
⑥-3→Aw(/As(※2))(サバナ)気候【判定終了】
(※1:モンスーン気候…弱い乾季のある熱帯雨林気候)
(※2:As(熱帯夏季少雨)気候は、差異がほぼないことからサバナ気候に区分されることが大半なので、Aw気候と同様に扱い、ここでは割愛しました。)
【⑦ C(温帯)気候内の分類】
我が国日本の大半が属する温帯気候では、より緻密な分類が行われます。最初の乾燥限界を求める時に使用した(s、w、f)を使用し、さらにそこに細かく最暖月、最寒月平均気温による分類を加えます。
⑦-1 s気候、w気候、f気候の分類
→分類済み(①を参照)→⑦-2へ
⑦-2 気温による3区分
最暖月の平均気温が22℃以上
→a気候に該当→⑦-3へ
最暖月の平均気温が22℃未満かつ、平均気温が10℃以上の月が4ヶ月以上
→b気候に該当→⑦-3へ
最暖月の平均気温が22℃未満かつ、平均気温10℃以上の月が1-3ヶ月
(かつ、最寒月の平均気温が-38℃以上)
→c気候に該当→⑦-3へ
⑦-3 (⑦-1と⑦-2の合体判定)
C+f+a→Cfa(温暖湿潤)気候【判定終了】
C+f+(b/c)→Cfb/Cfc(西岸海洋性)気候【判定終了】
C+w+(a/b/c)→Cwa/Cwb/Cwc(温暖冬季小雨)気候【判定終了】
C+s+(a/b/c)→Csa/Csb/Csc(地中海性)気候【判定終了】
※Cw気候とCs気候では、a-cが省略されるパターンがほとんどである。
【⑧ D(冷帯)気候内の分類】
冷帯気候でも、温帯気候とほぼ同様に最初の乾燥限界を求める時に使用した(s、w、f)を使用し、さらにそこに細かく最寒月平均気温、最暖月平均気温による差異を加えた形で緻密な分類を行います。
⑧-1 s気候、w気候、f気候の分類
→分類済み(①を参照)→⑧-2へ
⑧-2 気温による4区分
最暖月の平均気温が22℃以上
→a気候に該当→⑧-3へ
最暖月の平均気温が22℃未満かつ、平均気温が10℃以上の月が4ヶ月以上
→b気候に該当→⑧-3へ
最暖月の平均気温が22℃未満かつ、平均気温10℃以上の月が1-3ヶ月かつ、
最寒月の平均気温が-38℃以上
→c気候に該当→⑧-3へ
最暖月の平均気温が22℃未満かつ、平均気温10℃以上の月が1-3ヶ月かつ、
最寒月の平均気温が-38℃未満
→d気候に該当→⑧-3へ
⑧-3 (⑧-1と⑧-2の合体判定)
D+f+(a/b/c/d)→Dfa/Dfb/Dfc/Dfd(亜寒帯湿潤気候)気候【判定終了】
D+w+(a/b/c/d)→Dwa/Dwb/Dwc/Dwd(亜寒帯冬季少雨気候)気候【判定終了】
D+s+(a/b/c/d)→Dsa/Dsb/Dsc/Dsd(高地地中海性気候)気候【判定終了】
※D気候では、a-dが省略されるパターンがほとんどです。(じゃあなんで出した…)
…こうして世界の気候は以下の区分に分類されます。
Af(熱帯雨林)気候
Am(熱帯モンスーン)気候
Aw(/As)(サバナ)気候
BSh/BSk(ステップ)気候
BWh/BWk(砂漠)気候
Cfa(温暖湿潤)気候
Cfb/Cfc(西岸海洋性)気候
Cwa/Cwb/Cwc(温暖冬季小雨)気候
Csa/Csb/Csc(地中海性)気候
Dfa/Dfb/Dfc/Dfd(亜寒帯湿潤気候)気候
Dwa/Dwb/Dwc/Dwd(亜寒帯冬季少雨気候)気候
Dsa/Dsb/Dsc/Dsd(高地地中海性気候)気候
ET(ツンドラ)気候
EF(氷雪)気候
この区分法が区分するのは現象そのものを指す「気象」では無く、ある土地の気象(気温や降雨量の状態)の長期間を平均した様子である「気候」ですので、例えば直近1年の値のみで判定するのは実際のところ学術的には不適なのではとも思いますが、今現在の日本や世界の気候区分の変化(と言っていいのでしょうか…)が気になる場合、最新年のデータのみを使用して、素人ながら気候区分を判定してみる遊びをしてみても面白いかもしれません。
(面白い例として、ギリシャのアテネは現在のデータだと温帯(C気候)の地中海性気候などでは無く乾燥帯(B気候)に分類されてしまう…ことなどが挙げられます。このような例は世界中に見られると思いますので、是非いろいろと調べてみてください。)
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