風に身を委ね

風というのは不思議なもので、私たちが意識していない間にも勝手にどこかへと行ってしまう。何を言っても聞かず、何を言っても待ってはくれないのである。
一方で、台風のよう読んでもいないときにいきなりやってきてしまうのもまた、風なのである。
そんな風は、常に新しいものを見せてくれる。それと同時に、人間を暖かくも涼しくもさせてくれるものなのである。
私はそんな風が大好きだ。特に、北から来る涼しい風が大好きで、そんな風が吹いた日には無性に外を走り回りたくなるものである。まるで、童話の「雪」に出てくる犬のようである。涼しく乾いた風は、やさしく肌に触れていく一方で、どこか物憂げな印象を受ける。

近年、クリーンエネルギーとして「風」による発電などが実用・量産化されようとしている。そもそも古来より風と共に文明を発達させてきた人間に取ってみればそれもまた、前近代的で同時に未来的な、どこか不思議でどこか懐かしさを感じさせるものである。
もちろん、それが政策であったとしても私はその政策や行動に対してあれやこれやと文句をつける気は一切無い。
ただ、風に身を委ね、ただ静かに生きている人間にとってみれば、ごくごく自然なごくごくありうる話だと捉えているだけである。

世の中の移り変わりはせわしい。日々出会いがあり、別れがあり、時に人間は、ほっと一息をつきたくなるものである。

そんなとき、空を見上げ、わたっていく風を感じるのもまた一つのリラックスなのかもしれない。

コメント