雨に濡れてしまう駅、西枇杷島

鉄道の駅には大体屋根がついている。無人駅など規模の小さい駅でも、雨宿りができる程度の短い屋根がついていることが多い。待合室が設置されている場合もある。

ところが西枇杷島駅のホームには屋根がない。「少しくらいあるだろう」と思う方もいるかもしれないが、本当にないのだ。大ターミナル、名鉄名古屋の3つ隣にしてこの状況である。

〜西枇杷島駅とは〜

そもそも西枇杷島駅とは、愛知県清須市西枇杷島町に位置する名鉄名古屋本線の駅である。駅ナンバリングはNH37。停車する種別は普通のみで、特別停車する優等種別も存在しない。薄々感づいている方もいるかもしれないが、名鉄は優等種別(ここでは普通以外の種別を指すのに使わせていただく)を優先するダイヤが組まれているため、普通列車の本数があまり多くない。特に西枇杷島駅のある区間(東枇杷島ー須ケ口間※1)は極めて少なく、日中は毎時2往復という状況だ。ちなみに名古屋本線の中で日中に普通が毎時2往復しか来ないのはこの区間の他には東岡崎ー伊奈間しかない。東岡崎まで行ってしまうと名古屋からだいぶ離れてしまうので本数が減るのも仕方がないと思えるが、東海地方最大とも言える巨大ターミナル駅である名古屋からさほど離れていないのにも関わらず毎時2往復というのは何とも寂しい状況である。なお、伊奈ー豊橋間にはそもそも普通列車の設定がなく、急行・特急・快特の3種別のみの設定となっている。

日中の列車停車本数から推察できるように西枇杷島駅の利用客数は、お世辞にも多いとは言えない。2013年の1日平均乗降客数は830人で、名古屋本線60駅の中で53位だった。しかしホームの屋根がないのは利用者が少ないからというわけではない。その理由は駅の立地にあった。

〜恵まれない立地〜

西枇杷島駅は、少し須ケ口側に行けば東海道線及び東海道新幹線の高架が跨ぎ、名古屋側に行けば枇杷島分岐点(※2)へのアプローチのための急カーブがある。そんな状態であるのにも関わらずホームは24線、須ケ口側には渡り線もあり、さらには犬山線の岩倉方面へ続く側線も持っているという、大変多機能な駅となってある。ちなみに渡り線は昼間、名古屋止まりの河和・内海方面からの特急が折り返すのに使われる(※3)。側線は稀に使われるが、営業列車は使用しない。以前1600系を1700系に改造した際に特別車の方向転換をするためこの側線を含むデルタ線を使用した、という前例がある。

このような厳しい状況から、十分にホームの長さや幅をとることができなかった。そのため、

・屋根がない
・待避線に入れるのは4両まで
・安全のため、停車する電車が到着する直前までホームに入れない

といった制約ができてしまった。ただ、鉄道ファンからは「狭すぎる駅」「ホームで電車を待てない駅」などと親しまれていた。

画像の赤丸で囲った部分が駅。屋根がないのでホームの点字ブロックが黄色く見えているのが分かる。(画像はGoogleMapより。)

〜ついに屋根が?〜

そんな西枇杷島駅だが、ついに名鉄がホーム拡幅などの工事に着手するようだ。屋根やベンチがつく他、駅舎も上下線ホームそれぞれに新設され、一般的な名鉄の無人駅のスタイルになる。

今年3月のダイヤ改正で待避設備が不要になった(※4)ことが、名鉄が工事に踏み切った大きな要因だ。待避線を潰して相対式ホームにするようだが、個人的には先述の回送列車の運用がどう変わるのかが気になっている。私は西枇杷島駅に行ったことがないので、工事が行われる前に一度訪れてみたいと思う。

「名物待避」が見られなくなるのは寂しいが、普段駅を利用している乗客からすれば屋根がつくことにより快適な駅になることは間違いない。雨の多い梅雨の時期でも、濡れずに電車を待つことができるのだから。

-注釈-
※1 厳密に言えば枇杷島分岐点ー須ケ口間。
※2 名古屋本線と犬山線の分岐点。枇杷島分岐点ー金山間は名鉄で最も電車の本数が過密な区間と言える。
※3 配線の都合上、一旦須ケ口方面へ行ってから本線上で折り返し、上り待避線に入る。
※4 詳しくは私の前の記事を参照されたい。

アイキャッチ画像のミュースカイの撮影場所が西枇杷島駅ではなく東枇杷島駅なのはご容赦願いたい。

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